イリアスのゾイド講座 出張編

第二回 ナイトシュロード



 ご無沙汰しております、黒燈様。イリアスです。我ながらそろそろ「押しかけ講座」に改名してもいいのではないかと思いつつ、ナイトシュロードに関する考察及び私的見解、ということで、「イリアスのゾイド講座」、始めさせて頂きます。

 ナイトシュロード。ネオゼネバス帝国最初で最後の中型ゾイドにして「傑作機」と呼ばれながら、10年にも満たぬ時間のみを戦場で生きたゾイド。この機体には、かつてゼネバス帝国が開発したあるゾイドがだぶって見えます。
 ライジャー。旧大戦において、ゼネバス帝国が最後に開発したゾイドです。この機体も、傑作機と呼べるポテンシャルを秘めながら、戦場に名を馳せた時間は非常に僅かなものでした。
 両者を比較してみるに、ただ上記の境遇が似ているのみならず、意外なほどに多くの共通点を見出す事が出来ました。

 まず、その設計思想。
 ナイトシュロードもライジャーも、「高速機」であり、「汎用性」が求められ、かつ高い「生産性」を有するという機体です。
 両者が必要とされた背景は、必ずしも同じではありません。片や、大陸を制圧し掃討戦を行った時期。片や、戦線を後退させ守りに徹した時期。ですが、要求された性能は非常に似通っていました。
 また操作性が良好であるという点も共通しています。ガンタイガーから転換訓練なしで乗り換えが可能だったナイトシュロードと、新兵が操縦し共和国防衛線を突破した事もあるライジャー。状況が多少違うとはいえ、どちらも高い操作性を示す事例です。

 特筆すべき共通点として、脚部構造が挙げられます。
 ナイトシュロードは、前後の脚部を構造的に統一し、部品の70%を共有するという設計が取られています。これにより、生産性を大きく向上させました。
 同様の設計は、ライジャーにも為されています。いえ、むしろ外観的には、ライジャーの方が直感的に理解出来るでしょう。前後の脚部における黒いプロテクターパーツは、全く同じ物を使用しているのですから。

 といった具合に、ナイトシュロードとライジャーには共通点が多数あります。恐らく意図されたものではないのでしょうが、ゼネバス製中型高速ゾイドの血は、間違いなくライジャーからナイトシュロードへと受け継がれています。
 しかし……、いえ、故にと言うべきか。その末路すらも、ナイトシュロードは受け継いでしまった。
 ネオゼネバス帝国の方針転換、及びZOITEC社の技術提供により、無人ゾイド……キメラブロックスの導入が開始されました。元々人的資源の少ないネオゼネバス帝国にとって、この無人ゾイドはまさしく最適な兵器といえます。駆逐・殲滅戦の主力は、少しずつキメラブロックスが担うようになりました。  従来のゾイドの常識を覆す汎用性・整備性・コストパフォーマンス。
 最終的に決戦ゾイド・セイスモサウルスおよびそれらの護衛キメラの大量投入が計画される段階になって、ナイトシュロードは生産を停止。ZAC2106年12月の事でした。
 ネオゼネバス帝国の建国から数えても、5年足らず。ブロックスの台頭という歴史の波にさらされ、ナイトシュロードは姿を消して行きました。まるで、暗黒軍の参戦により姿を消したライジャーの後を辿るかのように。

 もちろん、ライジャーとは状況がまるで違います。ナイトシュロードは生産終了までに充分な機体数が揃えられてはいましたし、そもそも勝ち戦での出来事です。
 ですが、私個人の主観から見て、ライジャーとの境遇の一致を感じずにはいられないのです。同じゼネバス帝国製であるという点が、余計にそう感じさせるのでしょうけれど……。

 時代の流れ、歴史の波は時として、抗えぬ大きな壁となります。ライジャーに対しても、ナイトシュロードに対しても。……もちろん、我々自身に対しても。
 ですが、抗う事を諦めてはいけないと思うのです。現に今、ライジャーの設計者であるケネス・オルドヴァイン技術将校の研究が再評価されていたり、歴史の闇に沈んだはずの大異変直後の記録が再び発掘され始めています。
 いつか、ナイトシュロードが再び多くの人に知られる機体となりますように。
 その時に、この講座が少しでもお力になれば幸いです。

 最後までお付き合い頂き、ありがとうございました。では黒燈様、御機嫌よう。イリアスでした。














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