イリアスのゾイド講座 出張編 第三回 フォルティス 皆様こんにちは、はじめましての方は、はじめまして。イリアスのゾイド講座、はじまります。 今回ご紹介するゾイドは、『GuS-Z0101 FORTIS』……通称『フォルティス』。ニクス大陸を拠点とする兵器開発メーカー『グースヴィネストラーダ社』が開発したジャッカル型ゾイドです。 エースパイロットあるいは傭兵といった個人単位を相手に、チューンナップ機やカスタム機の開発から販売、整備といった特殊な業務体系を持つ同社が開発した完全オリジナルゾイド、それがこのフォルティス。グースヴィネストラーダ社(以下GS社)が持つ技術の全てをつぎ込んだまさしく『集大成』と呼べる機体であり、多数のワンオフカスタム機によるバトルイベント『アリーナ』においても見事に予選を突破、決勝へと駒を進めています。 搭載されている技術をそれぞれ見ていきますと、まず筆頭に挙がるのがプラズマブーストコンデンサー『アルスヴィズ』。ゾイドコアに併設された二基の当装備は、フォルティス本体の出力増強に加え各種装備へのパワー供給も行う『第二の動力』として機能します。 コンセプトとしては、ネオゼネバス帝国のライオン型ゾイド『エナジーライガー』に搭載されていたエナジーチャージャーに近いものがありますね。本体の出力強化に加え、発生するエネルギー全てを武装に回す事により従来型を大きく上回るエネルギー効率を叩き出した同装備ですが、エナジーチャージャーがエネルギーパイプを用いた外部有線接続だったのに対し、アルスヴィズではエネルギーラインを機体内に収めるなどより洗練された印象を受けます。排熱の問題で、最大稼動時には機体外へ露出させる必要があるという弱点もあることはありますが……。 続いて、脚部に搭載された新型マグネッサードライブ、『ランドリンクス』。元はゲーターの時代から存在する地磁気の反発を利用した地表滑走システムですが、フォルティスではこれに加えて『吸着』作用を利用し、地表に『張り付く』事で加減速、方向転換の高速化を実現。『マグネッサー=反発』という常識に囚われない自由な発想には目を見張るものがあります。 外見的に最も目を引くのが、肩部に装備された複合兵装ユニット『アエグリン』。その内訳は、ダークスパイナーの技術から発展したジャミングブレードタイプβ『スフィア』とその先端部に備えられた高出力プラズマキャノン、さらに同じく高出力タイプのプラズマブレードと、そこに併設された限定空間電磁防壁『ブラウシルト』。これらをまとめたユニットが左右両肩に装備されています。 特筆すべきはジャミングスフィアでしょうか。これはダークスパイナーのように敵機のコントロールを奪取するほどの能力は無いものの、対象の武装あるいは動力機関を停止、もしくは暴走させる……つまるところ、実戦で使用するには充分な出力を持っています。出力を抑えた分取り回しも良く、排熱装置やアンカーも不要で高速走行中にも使用可能と、より実戦的な装備へと進化しています。さらには二基あるうちの一基は本体から独立して自律飛行が可能であり、その際の効果範囲は直線距離で約800メートルに及びます。 ジャミングスフィアに併設されている高出力プラズマキャノンは、フォルティスの主砲に相応しい威力を誇ります。電磁エネルギーの塊を高初速で射出し、直撃を許せば大型ゾイドすら一撃で行動不能に陥るほど。 しかしながら当然高出力ゆえの弱点もあり、一度の射撃に対し約4秒の砲身冷却と再チャージを必要とするため、二門を交互に放つにしても火力制圧ポイントを作り出すだけの弾幕は期待出来ません。ZAC2030年代の昔ならいざ知らず、ゾイドの高速化が進んだ現代ではゴルドスの主砲すら命中率を殆ど期待出来ないのですから。 もちろん、この主砲の役割は弾幕すなわち面制圧ではなく、一点の突破。アウトレンジではなく有視界のミドルレンジからクロスレンジで真価を発揮する一撃必殺の武器と言えるでしょう。 格闘戦に用いられるのが、プラズマキャノンに併設されたプラズマブレードです。キャノン同様に電磁エネルギーで刀身を覆い、対象を溶断する武装でしょうか。 そして防御兵装、電磁シールドジェネレーター『ブラウシルト』。瞬間的に強力な電磁障壁を発生させるこの装備により、防御能力も平均以上と隙の無い性能を見せ付けます。 これら多数の高出力装備を同時運用出来るのも、ひとえにアルスヴィズの発生させる大出力ゆえですね。もちろんその分欠点も大きく、アルスヴィズは排熱量が凄まじく一切の隠密製を期待出来ません。……ブラックホール排熱システムって、ロストテクノロジーの仲間入りしてましたっけ? それはともかく、格闘砲撃補助防御と全方位に渡って隙の無い武装をコンパクトに纏めたこの『アエグリン』、複合兵装としては非常に高いレベルなのではないでしょうか? もちろんフォルティスの武装はこれだけではありません。アエグリンのプラズマキャノンが主砲ならば、こちらは副砲。背部に超小型拡散荷電粒子砲を装備しています。 バレル、コンバーター、シンクロトロンジェネレーターを内包した筐体は小型ゾイドに搭載可能なほどに小型化されていながら、フルチャージ時にはジェノザウラーの60パーセントもの荷電粒子を放出可能な出力を誇ります。これは粒子放射の形態を広域拡散型に限定した事により得られた恩恵であり、バレルの短縮及び運用時の安定性も確保。広範囲に荷電粒子をばら撒いて弾幕を張り、敵機の足止めや誘導兵器への防御などに使われます。これと後述する22連装ハイマニューバーマイクロミサイル、そしてジャミングスフィアで敵の動きを制限し、主砲のプラズマキャノンあるいは格闘戦でとどめ……というのが、フォルティスの理想的な戦術でしょうか。 先述の荷電粒子砲のカウンターウェイトとなる部分には、22連装ハイマニューバーマイクロミサイルポッドを装備しています。熱感知能力を持つ弾頭を、状況に応じて単発あるいは全弾同時に発射する事が可能で、また作戦に応じて別の複数種の弾頭を装填出来る汎用性の高い武装となっているようですね。 そして格闘戦用の武装として、アルスヴィズからパワー供給を受けて使用される高出力のハイパーレーザーファングやストライクレーザークロー。加えて前脚部先端に装備されたアンチ・エネルギーシールド・フィールド発生装置により、接近戦時には敵のシールドを無効化する事も可能です。 さて、一通りフォルティスの装備を見てきたわけですが、実はこの機体には革新的な技術はそれほど搭載されていません。コンセプトの面で言うなら、『吸着』というこれまでとは真逆の発想を持つマグネッサー『ランドリンクス』とエネルギー障壁無効化システムくらいなもので、他の技術は全て、既に他のゾイドが実装し運用していた装備を徹底的にブラッシュアップしたものとなっているように見受けられます。簡潔に纏めると、そうですね……『いいとこ取り』でしょうか? 反重力やら戦闘AIやら、ナノマシンやら果ては物質分解・再構築……と無茶苦茶な技術が乱発されている『アリーナ』において、実質的に既存技術のみで勝ち上がるだけのポテンシャルを持ったフォルティスは、極めて『良い』ゾイドだと言えます。なにせ基本が既存技術という事は、量産もそれなりに容易、と推察出来ますからね。 とはいえ……、いかに洗練された武装を持ち、かつアルスヴィズという大出力を持っていたとしても、母体となるゾイドそのもの、さらに言えばゾイドコアがそれを許容出来るキャパシティを持たない限り、意味がありません。地球風に例えるなら、モーターボートに戦艦用のエンジンと燃料を積み込むようなものですからね。 ではフォルティスはどうやってその問題を解決したのか。さる筋からの情報によれば、もともと強靭なニクス大陸固有のジャッカル種からより生命力の強い個体を選別し、さらに『オーガノイドシステム(以下OS)』を機獣化する前段階で使用、より自然な状態で代謝の活性化、再生能力の強化などを行っているとのことです。 この『機獣化する前段階でのOS作用』は、元々はゾイドコアの細胞分裂を促進し急速に個数を増やすために使用されていた技術であり、第二次大陸間戦争時にガイロス帝国がウオディックやデスザウラーをこの方法で量産しています。フォルティスではこれの副次的効果による生命力強化を狙ったのでしょう。 しかし……、発表されているデータでは『コアに負担をかける事無く』との文言がありますが、……あえて言いましょう、ありえないです。 GS社のスタッフは、『コアへの負担』=『凶暴化、操縦性の悪化』と捉えている節がありますが、私はこれは間違いだと考えています。OSの効果、注目されがちなのは『凶暴化による戦闘能力の飛躍的向上』ですが、『ゾイドの凶暴化』=『OSそのものの効果』であるとは、証明されていないのですから。 OSを搭載したゾイドが凶暴化するのは、OSそのものの効果というよりは『ゾイドコアを直接弄られた事への怒り』という要因が大きいのではないか、という説があります。OSがゾイドコアに与える影響についても、実は未だにはっきりとした答えは出ていません。 これについて話し出すと完全に脱線してしまうので自重させて頂きますが……、正直な話、OSがゾイドコアに全く負担を与えないというのは、ちょっとばかり考えにくいと私は思います。私もこれに関しては専門外なのであまり上手くは言えませんが、結局の所薬は薬、副作用ゼロとは考えにくいのです……強力であればあるだけ。 フォルティスを紹介するべき講座において、こういう否定的な表現は本来してはいけないと理解はしています。ですが、時々無性に不安を覚えるのです。OSに限らず、今アリーナでも使用されている生命操作系技術において、ヒトはどこまでゾイドの『なか』に立ち入ることが許されるのか。ヒトとゾイドが近付きすぎた時、何が起こるのか……。 いえ、独り言です……って、言えればいいのですけどね。すみません、私個人の話は、やっぱり持ち込むべきじゃありませんね。 さてさて、フォルティスについての解説をさせて頂きました。それにしても、今季のアリーナは色々と凄いですねー……。参加者数もかなり増えていますし、決勝に進出したゾイド、そしてゾイド乗りはどれも一騎当千の強者ぞろい。その中で、今季が初参加のGS社、そしてフォルティスがどのような結果を残すか……。講座を担当させて頂いた者として、そして何より一人のゾイドファンとして、見守らせて頂きます。 それでは最後までお付き合い頂き、ありがとうございました。では皆様、御機嫌よう。イリアスでした。 |