イリアスのゾイド講座 出張編

第四回 ダインスレイヴ



 皆様こんにちは、はじめましての方は、はじめまして。イリアスのゾイド講座、はじまります。

 今回紹介するゾイドは、ZAC2100年代初頭に開発されたネオゼネバス帝国の次期主力戦闘ゾイド『ダインスレイヴ』です。主力機として充分な性能を持ち、かつ優れた生産性を有していながらも、ある事情から総生産数が僅か64機という『幻』のゾイドとも言われていますね。
 ZAC2101年。中央大陸に上陸を果たした鉄竜騎兵団(アイゼンドラグーン)……後のネオゼネバス帝国軍は、圧倒的な機動力と配備されたゾイドの単機当たりの性能、そして『ダークスパイナー』や『グランチャー』といった強力な『搦め手』の存在により、驚異的な進撃速度でデルポイを手中に収めて行きました。しかしながらヘリックシティ制圧後、『ネオゼネバス帝国軍』として組織を再編するにあたり、『機動力と隠密製に富んだ奇襲部隊』である鉄竜騎兵団の欠点が浮き彫りになります。
 ゾイド単機当たりの性能を極限まで高めることによって発生する、生産性と整備性の低下。特に主力機である『バーサークフューラー』はチェンジング・アーマー・システムの採用や荷電粒子砲の搭載などにより特にその傾向が顕著であり、国力の少ないネオゼネバス帝国にとって、早期に数を充当出来る新たな主力機の開発は急務と言えるものでした。
 電子戦用である『ダークスパイナー』と支援機である『キラードーム』を物理的に『合体』させた『キラースパイナー』などを繋ぎとしながらも、新たに要求された主力戦闘ゾイド。それは中央大陸特有の『ギガノトサウルス型野生体』をベースにした機体が選定され、クック市近郊の帝国軍工廠で開発が行われる事となりました。
 開発コンセプトは、何よりも生産性の重視。多少の性能低下を容認してでも、早期に数を揃えられる事、そして高い整備性を持つ事が重要視されるというある意味異例な要求であり、『バーサークフューラーの70%以下の開発費』が至上命題として課せられたと聞きます。
 ただ……、この数字、私が思うに依然、高額です。なにせ比較対象がバーサークフューラーなので。姉妹機であるライガーゼロが、ブレードライガーの約3倍の開発費を抱えていた事を考慮に入れると、バーサークフューラーの開発費もまた、ほぼ同等かそれ以上と推察されます。つまるところ、『ライガーゼロの開発費の70%』と言い換えることが出来るわけなのですが……、単純計算で、それでもブレードライガーの2倍以上の開発費がかかります。
 いかんせんゼロの『約3倍』という数字が共和国側の公式資料に基づく物とはいえ、数が欲しい機体の開発費と言うには、まだちょっと高額なんじゃないかと思わざるを得ないのは……貧乏人の性でしょうか? ……いえ、私は別に貧乏と言うわけでもないのですが。
 ともあれ。ZAC2102年初頭に完成した試作機『クルーエル』を経て、制式採用されたダインスレイヴ。しかしながらこの機体は、思わぬ事態によって生産の凍結を余儀なくされます。
 ZAC2102年2月。ダインスレイヴのゾイドコアを培養していた農場に偽装した地下施設が、共和国軍に接収されるという事態が発生します。これにより、開発工廠に納入されていた成体コア68個及び研究用の野生体4頭を除く残りのコア、野生体、そして施設の全てが共和国に奪われてしまい、ダインスレイヴのコアは調達が不可能となってしまいました。
 最終的に、64機の制式採用機が完成した段階で生産は終了。ダインスレイヴのみで構成された部隊が新設され、北西部ウラニスク方面軍へ編入するという形で実戦投入されます。
 その後、ダインスレイヴは再生産される事の無いまま中央大陸を戦い続け、最後に残る記録はZAC2105年、ウラニスク基地及びトビチョフ基地に配備された計17機のみとされています。その後の去就はヘリック共和国軍の大反攻作戦の影響や、キメラブロックス等の投入による組織の変化により、記録からは読み取る事が出来ません。唯一、ネオゼネバス帝国軍立陸軍記念博物館に、ゾイドコアを外して展示されている実機が残るのみとなっています。

 さて、今となっては実際に動くダインスレイヴを目にすることは出来ませんが、幸いなことに戦時中の映像が残っています。現在は私設のインターネット・サイト『AUTOCRAT ISLET』のアーカイブに動画が保存されており、一般公開がなされている貴重な映像です。一部の動画共有サイトにも掲載されているため、そちらで目にする機会もあるでしょう。
 ダインスレイヴ本来の持ち味である『集団戦闘』は残念ながら収められていませんが、基地防衛に出撃し、搭載されたあらゆる兵装と強靭な機体を駆使して敵機を撃破するダインスレイヴの姿を見ることが出来ます。
 特筆すべきは、『マグネッサードライブ』を使用した急加速戦法が映像として残されている点でしょうか。驚異的な加速で距離を詰め、強力なバイトファングで一気に敵を噛み砕くその姿はまさに圧巻の一言です。
 また、ガイロス帝国軍の『ヴェナトラプター』が映っているのも要注目ポイントですね。

 ここまでお付き合い頂きましたが、如何でしたでしょうか。ダインスレイヴは充分な性能と生産性を両立させた稀有な機体でありながら、『ゾイドコアの調達が不可能になる』という非常に特殊な事情で幻となったゾイドです。しかしながら後に与えた影響は大きく、尻尾の構造や咬合力に特化した顎などは、一部の後発機に受け継がれています。
 記録、映像、そして後のゾイド達。これらは、確かに『ダインスレイヴ』という機体が存在した事を、幻では無い事を示しているのです。

 では皆様、御機嫌よう。イリアスでした。













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